大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(特わ)272号 判決

本店所在地

東京都中央区銀座西七丁目三番地

(事務所所在地同都同区銀座西六丁目四番地 長谷本社ビル内)

長谷観光株式会社

(右代表者代表取締役 長谷敏司)

本籍

東京都中野区桃園町四六番地

住居

同都区中野三丁目一二番六号

長谷観光株式会社代表取締役

長谷敏司

(旧名 峰蔵)

明治三六年二月二三日生

本籍

宮城県桃生郡河北町針岡字六角三〇番地

住居

神奈川県藤沢市片瀬西方二、四八三番地

無職(元長谷観光株式会社取締役)

佐藤みね子

大正九年四月一日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当栽判所は、検察官小野慶造出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告長谷観光株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人長谷敏司を罰金一〇〇万円に、同佐藤みね子を罰金七〇万円に各処する。

被告人長谷敏司、同佐藤みね子において右罰金を完納しないときは、金二万円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告長谷観光株式会社は、東京都中央区銀座西七丁目三番地に本店を置き、事実上の本店事務所を同区銀座西六丁目四番地長谷本社ビル内に設け、飲食店、料理店、料亭、キヤバレー等の営業を目的とする資本金三、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人長谷敏司は、右会社の代表取締役であつて会社の業務全般を統轄していたもの、同佐藤みね子は昭和三九年六月二五日までは同会社の監査役、同日以降昭和四三年五月までは同じく取締役としてその間一般に常務と呼ばれ、被告人長谷を補佐して営業関係を統轄していたものであるが、両名は被告会社の業務に関し、共謀のうえ法人税を免れるため売上金を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三八年五月一日より昭和三九年四月三〇日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙一修正貸借対照表(昭和三九年四月三〇日現在の分)記載のとおり六、四六八万二、七六一円であつて、これに対する法人税額は二、四三七万九、六五〇円であつたにもかかわらず、昭和三九年六月三〇日、同都中央区新富町三丁目三番地所在の所轄京橋税務署において同署長に対し所得金額は二二四万〇、三五七円であつてこれに対する法人税額は六九万四、二九〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額二、三六八万五、三六〇円については法定の納付期限内に納入せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した。

第二、昭和三九年五月一日より昭和四〇年四月三〇日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙二修正貸借対照表(昭和四〇年四月三〇日現在の分)記載のとおり二、五二四万二、七八五円であつて、これに対する法人税額が九一五万九、七九〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年六月三〇日、前記京橋税務署において同署長に対し、所得金額は零であり従つて納付すべき法人税額もない旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額九一五万九、七五〇円を法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱したものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、登記官坂本正夫作成の登記簿謄本

一、徳山邦夫の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四〇年九月二日付=以下四〇・九・二の如く略記)並びに検察官に対する供述調書二通

一、梨沢仁男、木村幸博、浅尾英介並びに古川巌の各検察官に対する供述調書

一、長谷節江の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四〇・九・二)

一、押収にかか総勘定元帳計三冊(昭和四三年押第五四五号の一、一一、二一)、元帳計一八冊(同号の二ないし七、一二ないし一七、二二ないし二七)、銀行勘定帳計三冊(同号の八、一八、二八)、金銭出納帳計六冊(同号の九、一〇、一九、二〇、二九、三〇)並びに法人税確定申告書計二綴(同号の五六、五七)

一、被告長谷観光株式会社代表者長谷峰蔵名義の上申告書四通(四一・四・五、四一・八・二、四一・八・一一、四一・三・一五)

一、被告人長谷峰蔵名義の上申書三通(四一・七・一、四一・八・二、四一・一二・二四)

一、被告人長谷峰蔵の大蔵事務官に対する質問てん末書四通並びに検察官に対する供述調書二通

一、被告人佐藤みね子名義の上申書二通

一、被告人佐藤みね子の大蔵事務官に対する質問てん末書六通並びに検察官に対する供述調書二通

一、被告人長谷敏司、同佐藤みね子の各当公判廷における供述

(二)  別紙修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

(1)  普通預金、通知預金、定期預金並びに定期積金について、

一、大蔵事務官宮興作成の銀行調査書類並びに「公表帳簿上の会社名義定期預金の一部計上もれについて」と題する書面

(2)  無尽、減価償却超過額、建設仮勘定計上洩、美術品並びに未納事業税について

一、京橋税務署長津賀正二作成の法人税更正決議書証明書(三七・五・一-三八・四・三〇)

(3)  収入金について、

一、大蔵事務官宮興作成の長谷峰蔵、長谷節江の不動産取得に関する調査書

一、押収にかかる法人税調査資料計二綴(前同号の六六、六七)

(4)  貸付金について、

一、徳山邦夫、横倉睦彦、城武昇太郎、湯村良章、中谷喜代蔵並びに持田卓治の各大蔵事務官に対する質問てん末書一通(但し、徳山の分は四一・八・三)

一、長谷節江の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書各一通(但し、質問てん末書は四一・八・五)

一、山口敏一並びに伝田任志各作成の上申書

一、大蔵事務官宮興作成の長谷峰蔵、長谷節江の不動産取得に関する調査書並びに長谷峰蔵の不動産譲渡に関する調査書

一、京橋税務署長津賀正二作成の法人税更生決議書証明書(三七・五・一-三八・四・三〇)

(5)  立替金並びに八芳園立替金について、

一、京橋税務署長津賀正二作成の法人税更正決議証明書(三七・五・一-三八・四・三〇)

(6)  仮受金について

一、長谷節江の大蔵事務官に対する質問てん末書(四一・八・五)並びに検察官に対する供述調書

一、大蔵事務官宮興作成の長谷峰蔵の不動産譲渡に関する調査書

(7)  価格変動準備金について、

一、京橋税務署長津賀正二作成の法人税更正決議書証明書(三八・五・一-三九・四・三〇)並びに証明書

(8)  損金計上法人税並びに同法人都民税について、

一、京橋税務署長津賀正二作成の法人税更正決議書証明書(三八・五・一-三九・四・三〇)

(9)  役員賞与について

一、山本太郎、山田浩司並びに中村篤の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、脇正作成の上申書

一、大蔵事務官宮興作成の株式売買(信用取引)収支調

一、東京都出納室長萩本俊助作成の罰金相当額の納付済証明書

(10)  罰金相当額について、

一、東京都出納室長萩本俊助作成の罰金相当額の納付済証明書

(法令の適用)

被告人長谷敏司、同佐藤みね子両名に対する判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条によりその改正前の法人税法第四八条第一項、刑法第六〇条に(被告人佐藤は、被告会社における地位並びに業務執行の実態から見てその従業者と解すべく、従つて法人税法第四八条第一項の身分を有するものであり、刑法第六五条第一項を適用すべきものではない。第二の事実につきまた同じ。)第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項、刑法第六〇条に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内でこれを科すべく、よつてその範囲内において被告人長谷敏司を罰金一〇〇万円に、同佐藤みね子を罰金七〇万円に各処し、罰金不完納の際の換刑処分については、それぞれ金二万円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。

なお、被告人佐藤みね子の弁護人は、同被告人の本件各行為は同長谷敏司の共同正犯ではなく、従犯にすぎない旨主張するが、証拠によつて認め得る同被告人と同長谷との従来からの関係、同被告人の被告会社における地位と業務執行の実情特に売上金の一部を除外した場合の処置と同被告人の立場等を考慮するときは、これをもつて従犯と目すべきものではなく、共同正犯と認定するのが相当である。

被告長谷観光株式会社については、その代表者たる被告人長谷敏司が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条によりその改正前の法人税法第五一条第一項に従つて同法第四八条第一項の罰金刑を、また第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従つて同法第一五九条第一項の罰金刑をそれぞれ科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断することとし、よつて同被告会社を罰金八〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙一

修正貸借対照表

長谷観光株式会社

昭和39年4月30日

〈省略〉

別紙二

修正貸借対照表

長谷観光株式会社

昭和40年4月30日

〈省略〉

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